東京に疲れて訪ねた場所 ~吉川英治記念館~
オレは本を読むようなタイプの人間ではなかった。
読書が生活の一部になったのは大学時代から。
歴史小説にハマったのがキッカケだった。
吉川英治 著
吉川氏の長編小説は全部読んだ。
新平家物語は全16巻だったかな。いまでもエンディングの印象が残っている。
最初に読んだ著者の影響は大きく受けるね。
男性は、戦国武将で誰が好き? って会話になることが多い。
やっぱり、信長が一番人気。
でもオレは新書太閤記の影響で秀吉が好き。かなり少数派だね。
ちなみにビジネスの相方は、山岡荘八を読んでいるので家康が好き。
秀吉派と家康派でも、20年近くケンカもせず仲良くできている。
28年前、九州から就職で東京に出てきた。
埼玉のアパートから満員電車に乗って都内まで通った。
仕事は飛び込みスタイルの営業職で、数か月後には心身ともに疲れていた。
東京は、平日も休日も関係なく、どこに行っても人でごった返している。
ひと、ひと、ひと、 人の波にうんざりした。
そんなある日の休日、青梅線に乗って 二俣尾の駅に降りた。
当時は無人駅だったような記憶が残っている。
人がいない場所が青梅にはあった。そして懐かしい田園風景もあった。
なんだか、とても癒された。
目的地は吉川英治記念館。
その時に、一枚の色紙を買った。
「我以外皆我師」
20代の頃、座右の銘を聞かれたら、そう答えていた。
今日、なぜかふと思い立って、28年ぶりに車で吉川英治記念館に行ってみた。
ちょうど紅葉がきれいだった。
この正面の部屋が作品を執筆した書斎
今回も記念に色紙を買おうと売店に入った。
扉に半額セールという趣旨の貼り紙があり、気にはなっていた。
中には、気さくなおばちゃんの職員さんがいて、思い出話をしていると、
「残念ですね、3月で閉館になりますからね」
オレ「えっ?」
HPを確認すると書いてある。
しかも11月は金土日だけ開いていて、年内は11月30日までとある。
12月~2月まで閉館しており、最後の3月だけ開けているらしい。
オレは奇跡的なタイミングで訪れることができたようだ。
そうだよね。もう吉川英治の作品は古典のような存在で、著作料収入も激減していることが予想される。ネット書籍だと無料で読める時代だしね。
運営が厳しいのだと想像する。
応対してくれた職員のおばちゃんは、42年前の記念館立ち上げから勤めてきたとのことで、寂しさもひとしおだった。
そんなおばちゃんが、なぜか絵葉書をくれた。
オレは半額になった色紙を一枚買った。
「朝の来ない夜はない」
おばちゃん曰く、吉川英治が苦しかった時代、母親からの言葉だそうだ。
今日の写真は全部スマホ。
フィルムカメラでは、ペトリ&カラーフィルムで撮っている。
3月に、また来訪しようと思う。
その時はバルナック&モノクロでノスタルジックに撮りたい。