母親は超能力者だ ~息子よりも犬が親孝行~
それほど遠い過去の話ではない。
30代前半で独立し、もう20年近くになる。
事業はなかなか軌道に乗らなかった。3年ぐらいは貧困生活だった。
それでも、一応、軌道に乗り順調になった。
2008年のリーマンショック不況もなんとか乗り越えた。
多少の浮き沈みはあったが、なんとかなった。
ある時、オレのミスで仕事がなくなった。
特定の会社に売り上げを依存していたのが致命的だった。
あちこち駆け回り新規の仕事を取りにいった。
でも、1年や2年では回復できなかった。
相棒にも迷惑をかけた。
相棒はオレに一切文句を言わなかった。
ジリ貧状態が2年以上続いた。
そして、経済的に追い込まれた。
いろいろなものを切り崩し、なんとかこなしていた。
夜、眠れない日が続いた。
悪夢をよく見た。
歯がごっそり抜ける夢をよくみていた。
嫁はんに生活レベルを落とせないか聞いてみた。
反応は悪く、軽く一蹴された。
あの時のオレにとって、家族は負担にしか思えなかった。申し訳ないが。
嫁はんを含めて、家族はだれもオレの窮状に気づけない。
最期は生命保険しかないかな。
半分は冗談だけど、、、半分は、、、、
おそらく、こんなことで死んでる人、いっぱいいる。そう確信した。
そんな時、母親から手紙が届いた。
いつもなら、嫁はん宛か、孫宛てなのに、オレ宛ての手紙だった。
開けてみると、中に10万円が入っていた。
オレを心配する内容が書かれていた。
遠く離れたところにいる母親だけが、オレの窮状を察知していた。
電話の声のトーンか?
なぜ、このタイミングかはわからない。
オレは、その10万円を使うことにした。
2年間付き合いを絶っていた友人と呑みにいった。
これまで飲み会は控えていたから。
いろんな人と、開き直って明るく交流した。
10万円を使い切る前に、仕事が入ってきた。
20年前のお客さんから、電話が来たりした。
神風が吹いた。
そのおかげで、いまのオレがいる。
カメラを買うこともできる。
昨年、実家のネコが死んだ。
母親には、まだまだ元気でいてもらわないと困る。
そして、今年の4月に犬も逝った。
母親の落ち込み方は、ひどいらしい。
姉弟からも連絡がくる。
「ゴールデンウィークはオレが帰ってみるよ」
そう姉弟には告げていた。
そして自宅に帰ってみると、
犬がいる。
ん?
なぜ犬がいる? この犬は誰よ?
あまりの母親の落ち込みに、母親の姉(オレにとって伯母)が心配して、自分が飼っている犬をレンタルしてくれたらしい。
レンタルと言っているが、ほぼ貰ったようなものだ。
すでに、犬も母親に慣れている感じ。
まあ、よかった、よかった。
母親の周囲も、心配してくれているんだね。ありがたい気持ちになった。
後で、お礼に伯母の家にもいってみた。
ちなみに、伯母の家では数匹の犬が飼われていて、最初にレンタルしてくれた犬は吠えてうるさかったので返したらしい。
この犬は2匹目だそうだ。
おそらく、伯母の家で一番可愛がられていた犬を手放してくれたんだろう。
妹のためにね。
名前は いち。
こいつはかわいいね。
母親は、間違えて死んだ犬の名前を呼んでしまうことが多々あったけどね。
ローライ35&ポートラ800
母親と犬を連れだして志高湖へ
ボート乗り場は混雑していた
キャンプ場も賑わっている
ここの白鳥は強くて幅を利かせている
鯉を突き回す
人も怖がらない
白鳥ボートはのどかに泳ぐ
犬の いちくん、しばらく母親のことを頼むよ。